日高央の「今さら聴けないルーツを掘る旅」 vol.11

 Vol.11 Theme : 「昨今のアイドルとポール・ウェラーの親和性

 

 今年に入って女性アーティストのプロデュースをたっくさん手掛けさせていただきました! せっかく音楽ラヴァーズが集まっているmoraなので、一つ一つ元ネタを紐解きながらご紹介します。

 まずは美脚と(個人的には美脇だとも思ってる)北欧感で羨望の眼差しを集める美女2人組バニラビーンズ(以下バニビ)。レナ嬢のアイドル好きっぷりや、リサコ嬢のROCKマニアっぷりに歓喜しつつ、マキタ学級(芸人・ミュージシャンのマキタスポーツが率いるバンド)のイベント等で現場がご一緒の機会も多く、自然とご挨拶する仲に……そしてタワレコ渋谷にNOTTV1『MUSICにゅっと。』収録で週2で通うようになり、同じく渋タワで『洋楽第二企画室』MCで通い詰めているリサコ嬢と再会し、今回こうしてプロデュースするチャンスをいただいた感じです。

 アイドルとは言えキャリアの長い2人だし、ブリッブリのアイドル曲よりも、常にスウェディッシュ感やロック感を絶妙にハイブリッドしてきたバニビだけに、俺が書くとなるとやはり80’sの美味しい部分を抽出しつつ、今風にブラッシュアップした楽曲を提供したいなと思い、色々考えた果てに辿り着いたのが……スタイル・カウンシル(The Style Council)でした。

 オアシスやブラーといったブリットPOP勢の父・ポール・ウェラーが、オリジナルPUNK期にモッズ・スタイルをリバイバルさせて当時の英国キッズのハートを鷲掴みにしていたTHE JAMをあっさり解散させて、新たに結成したのがスタイル・カウンシル、通称スタカン。それまでのPUNK感の真逆を行くかのような、打ち込みやダンサブルな大人っぽいテイストを打ち出して我々リスナーの度肝を抜いた伝説のバンド……。

 とはいえ誰もがシンプルなR&Rに回帰していたオリジナルPUNK期に、元々R&Bやソウルの影響下にあったモッズ・サウンドを鳴らして唯一無二の音楽性を標榜していたのがTHE JAMだったし、当時のキッズには大人っぽ過ぎると感じられたサウンドもあらためて聴いてみれば、ジャズやフュージョン、クラシックからロックまで貪欲に取り入れたとんでもなくエクスペリメンタルな、でも極上のPOPとして昇華させた非常にハイブリッドなバンドだったことがよく判ります。

 デビュー・シングルの「スピーク・ライク・ア・チャイルド」(リンク先M3収録)からブラス全開のダンサブル感が気持ち良いし、当初はドラマーが正式メンバーではなかった点を活かして(ちなみにオアシスのドラマーだったアラン・ホワイトの兄、スティーブ・ホワイトが後にドラマーの座に)、大胆な打ち込みを導入して昨今のR&Bの先駆けとなった「ロング・ホット・サマー」(リンク先M1収録)とかも時代を先取りし過ぎててスゴいです。

 かと思うとイントロの♬チャ・チャ・チャ♬があまりにも有名な「シャウト・トゥ・ザ・トップ」(リンク先M16収録)ではアーバンなROCK感を打ち出したり、個人的なフェイバリット曲「ウォールズ・カム・タンブリング・ダウン」(リンク先M14収録)ではTHE JAM時代を彷彿とさせるシャウトとポリティカルなメッセージで、PUNK&ソウルとでも呼べる新たな疾走感をも獲得。時代やジャンルを超越する卓越したセンスとテクニックを常に披露するポール・ウェラーが、オアシスはじめイギリスの多くのミュージシャンやリスナーから慕われるのも不思議ではない天才っぷりが伺えます。

 というわけで天才でもテクニシャンでもない俺が、新人でもベテランでもないバニビに新たな風を吹かせるならば、やはりウェラー師匠のハイブリッド感が不可欠だろう! ということで、スタカン風ブラスROCKに、昨今のEDM的なダンサブル感を加味して制作&提供させて貰ったのが、その名もズバリ「スタイル・アンド・カウンシル」という新曲。バニビのワンマンLIVE限定配布シングルに収録されましたが、いずれ彼女達の新譜にも収録されると思いますので、是非いつかチェックしてみて下さい!

 


 

ポール・ウェラー関連作からおすすめのタイトルをピックアップ!

 

In The City(Remastered Version)/The Jam

The Jam
『In The City』

 

The Style Council
『Our Favorite Shop』

 

Paul Weller
『Paul Weller』

 


 
 
【日高央 プロフィール】
 
ひだか・とおる:1968年生まれ、千葉県出身。1997年BEAT CRUSADERSとして活動開始。2004年、メジャーレーベルに移籍。シングル「HIT IN THE USA」がアニメ『BECK』のオープニングテーマに起用されたことをきっかけにヒット。2010年に解散。ソロやMONOBRIGHTへの参加を経て、2012年12月にTHE STARBEMSを結成。2014年11月に2ndアルバム『Vanishing City』をリリースした。